透明水彩
耳に届く音に反応し、勝手に震え出す手足。込み上げる、吐き気。足も竦み、立っていられなくなってその場に踞る。呼吸するのさえも苦しくなり、涙が出そうになった。
――刹那。
「……美凪、サン?」
小さく響いたドアの開閉音と、それと同時にかけられた声。
今はまだあまり聞き慣れていないその声の主が誰か、なんて、特徴的な声色と独特なトーンの話し方で、それはわかっていたけれど。
「こんなところで、どーしたんですか?」
あたしの顔を覗き込むように問いかけてくる莱に、何とかして今の状況を伝えようとしても、ただ口がパクパクするだけで思うように声がでない。
だからただ、強まっていく雨音が聞こえないように、両手で両耳を強く塞いだ。
…――ああ、怖い。
蘇る鮮血が、あたしの思考を支配する。