透明水彩


明らかに様子がおかしいあたしに何かを察したのか、急に莱の表情が真剣さを帯びた。そして、


「……理人サン、探してきますね。」


塞いだ耳から、微かに聞こえた莱の声。と同時に立ち上がり、莱はあたしに背を向ける。

……待ってよ。
1人にしないで。嫌。おいて行かないで。

ひとりぼっちになったあの雨の日の夜が、今の心境や状況と重なった。


「行かない、で、」


理人を探しに行こうとする莱の服を掴み、ギュッと強く握りしめる。思いのほか掠れたあたしの声に、莱の歩む足が止まった。


「美凪サン?」

「…怖い。あたしを、1人にしないで。お願い。こわい。」


…――あー、何かもう、本当にダメだ。

自分自身、莱に対して何を訴えているのかもわからないし、さっきよりも明らかにしにくくなった呼吸。上手く息を吸うことさえできなくなり始めて、ただ強く目を瞑った。
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