透明水彩
「ちょっと気になったことを聞いてみただけ。この類の話は、叔父さんが1番詳しいと思ったから。」
そう言い足し、ソファーから立ち上がった。
そしてゆっくりと、叔父さんに背を向ける。
ドアまで行く間、叔父さんの視線があたしに向けられていたことには気づいてはいたけれど。
「じゃあ、失礼しましたー。」
その視線に振り向くことなく、ドアノブに手をかけた。
――刹那、
「……美凪ちゃん。」
突然かけられた声に、反射的に動きが止まる。
「できないこともないんだ。君が今、言ったことは。」
そして紡がれた言葉に、それが先ほどの自分が発した問いへの答えであると察した。
できない、こともない。
それが答えならば、あたしはこれから先もここに居られる。この世界のみんなの傍に居られる。
そんな期待が、胸の中に広がっていく。