透明水彩

「俺と理人、そして美凪がAゲート。佑稀と藍香がBゲート。莱と芽梨、ボスがCゲートを使い、このアジトから抜け出せ。
……いいか?今は戦うより、生き延びることが先決だからな。」


そしてケイのその言葉を合図とするように、各々違うゲートから時間差でアジトを脱出していく。

未だ怪我が完治していない莱が、叔父さんに背負われながらあたし達と正反対側のゲートへ向かうのを見ながら、あたしはただ、皆の無事を願うことしかできなかった。

だって、それもこれも、やっぱり全てはあたしのせい。
あたしがこの時代に来てしまったから。

だからこの時代の皆に、また、どうしようもない迷惑をかけてしまうんだ。


「……美凪、俺達も行くよ。」


そう言った理人に促され、今まで使ったことのないゲートから外へと出る。

夜の闇の中、大きく息を吸い込めば、冷たい夜特有の空気が肺を満たした。目の前に続く森のような茂みには、月明かりが優しく照らしている。

けれどその幻想的な雰囲気に反して、あたし達がおかれているのはあまりにも醜い争いの渦中だった。
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