透明水彩
でも、だからこそ。
だからこそ尚更、そんな理人に今回の件は相談なんてできない。
巻き込みたく、ない。
だからあたしはそんな内心を悟られないよう、精一杯の皮肉を紡ぐ。
「……何か理人、ムカつく。」
「いいよ、別に。でも俺は、何でも1人で抱え込む美凪の方がムカつくけど。」
小さく笑いながら、あっさりと嫌みを返してくる理人につられ、思わずあたしからも笑みが零れる。
理人の隣に居る藍香も、どこか安心したような面持ちであたしに笑みを向けていた。そんな中、理人が天井に両手を突き上げ、大きく身体を伸ばす。
「あー、何か美凪のせいで疲れた。」
「そうだろうね。だって私、理人がこんなに話してるとこ見たの、超久しぶりだもん。」
「……そんなことないだろ。藍香、余計なこと言わないで。」
そして、再び紡がれたあたしへの悪態らしき発言に、藍香はからかうように言葉を返す。一瞬の間をおいて理人は否定していたけれど、確かに普段どちらかというと無口な理人がこんなに話すのは珍しい。
それほどあたしが心配をかけさせているという事実に、本気で申し訳なく思った。