透明水彩
どうしてあたしの名前を知っているの、とか、何で確信を持っていることを窺わせるような声色で確認してくるの、とか、確かにそれも謎だったけれど。
今はそんなことより、不意に脳裏を過ぎる両親の手紙の内容……。今さらすぎるけど、もしあれに、何一つ虚偽がなかったとしたら――…
最悪な推測だけが脳内を巡り、表情が歪んだのが自分でもわかった。そんな困惑を隠せないあたしの反応を見て、目の前の男はニヤリ、と口角を吊り上げる。
そして一言、
「貴方が、高瀬美凪さん、で間違いないようですね。」
確かめるよう…否、さっきよりもはっきりと確信を持った声色で、再びゆっくり力強く紡がれた言葉に頭の中で警鐘が鳴り響く。駄目押しの言葉に、ビクリ、と肩が揺れた。
声がでない。
足が動かない。
身体が震える。
そんなあたしの異変に気づいた理人が、ギュッと強く左手を握りしめてくれたけれど。その手を握り返すのもままならないまま、ただ唇を噛み締めるしかできなかった。