透明水彩

そして案の定、今の状況を把握できるはずもない2人は、不審げにあたしと男とを見比べている。男だけが気味悪く笑みを浮かべる中、理人が不審感を顕わにしたままゆっくりと口を開いた。


「……すみませんが、彼女に何の用ですか?見たところ、知り合いという訳ではなさそうですが。」

「ええ。お察しの通り、今初めてお会いします。」

「そうですか。…あの、もし急ぎの用では無いのなら、もう帰らせていただいても構いませんか?何か彼女、具合が悪そうなので。」

「ああ、それは大変ですね。では後日改めて……と言いたいところですが、それは無理ですね。彼女にはこの先、二度と会うことはできないでしょうから。」

「……はい?」


男の言葉に眉を寄せる理人に構わず、男は緩慢な動作で自らの上着のポケットをまさぐる。そして取り出した銀色に光る塊を凶器へと開きながら、続けた。


「何しろ彼女、高瀬美凪さんは、今をもって一生を終えるのですよ。」
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