透明水彩
今まであたしは、何を躊躇っていたのだろう。
何を恐れていたのだろう。
無駄に先延ばしにしてきたことのせいで2人――大切な幼なじみを、こんな訳のわからない非日常に巻き込んでしまった。
……でも、本当はわかっていたんだ。あたしがすぐに“安全な世界”へ行かなかった理由なんて。
手紙を信じられなかったのは事実、でもそれよりも。
あたしはただ、離れたくなかった。あたしの存在するこの世界から。
ただ、一緒にいたかった。いつまでも変わらず、大切な人達と。
だからこそ、何処に通じているのかも定かではない世界に、素直に行くことができなかったのだ。
「…――よし。とりあえずここに隠れてやり過ごそう。」
理人に促され、ハッと我に返りながら見つめた先、目に映ったのは廃材の山。もともと何かの工場だったこの場所は、工場が潰れて以来、あちらこちらから運ばれてくる廃材の捨て場と化していた。
比較的大きな敷地を有する廃材置場のため、空きスペースはまれに不良のたまり場となっているような、そんな場所。