透明水彩
襲われた場所からここまで、相当な距離があるのを思い返し、かなり走り続けてたどり着いたのだと、今さらながら気がついた。
不意に心配になって後ろを振り向けば、まだ刺客には追いつかれてはいないようで、姿は見えない。
うまく撒けたのだろうかという不安と、姿が見えない安心感が交錯した、微妙な気持ちが渦巻く。
「……うまくいってたら、撒けたはずなんだけどね。とりあえず早く、隠れよ?」
そんなあたしの不安が伝わったのか、キョロキョロと辺りを見回すあたしの背中を押しながら、藍香は優しくそう言うけれど。
実際、声が震えてる。
あたしの背中に触れた手だって、小刻みな振動をあたしへ伝えてる。
あたしのせいで無関係な2人を巻き込んだ。
その事実は思いのほか重たかった。