透明水彩

あたしの発言に、一瞬だけ理人の視線があたしに向けられた。驚きやら困惑やらで揺らぐ瞳は、明らかに不安を湛えていて。


「こんなつもりじゃなかったんだ、あたし。非現実的で訳のわからないことに巻き込んじゃって、本当にごめんね。」


言うつもりじゃなかった本音も、今言うべきじゃない謝罪も、引き出されるように口をついて出た。

すでに前方に視線は戻されていたけれど、理人が怪訝そうに眉をしかめたのが何となく、だけどはっきりわかる。

…――刹那、


「お別れは済みましたか?…っ!」

「……美凪っ!!」


男がそう言い終わり、あまりにも素早い動きであたしの横へと移動したのと、突如叫んだ理人が、あたしを庇うように引き寄せたのはほぼ同時だった。

一瞬状況についていけなくて、理人の腕の隙間から藍香を見る。そんなあたし達の様子を見ていた藍香は、理人に負けず劣らず蒼白な顔をしていた。

それを視認してすぐに反対側へ顔を向ければ、高く振り上げられた凶器が風切り音をたてて、虚しく宙を切ったのがちょうど見えた。
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