透明水彩
理人――…
理人が、血濡れの両親の姿と重なる。やめてやめてそんなのダメ許されないあたしのせいで理人を犠牲にするなんて。
猛スピードで回転し、混乱を深める思考。
スローモーションで流れゆく忌ま忌ましい光景に、混乱した頭は単純なる解決策を導き出す。
…――あの男さえ、居なくなれば。
何を今さら、そう思ったのも確かだけれど。今のあたしに、どれだけ正常な判断ができるのかなんて、それこそ定かではない。
でも、あいつが居なければ。
両親が死んで不穏を孕んだあたしにだって、平穏が訪れたかもしれない。2人と一緒に、日常に溶け込むことができたかもしれない。少なくても、今日2人を巻き込むことはなかった。今現在、理人を命の危機に晒すこともなかった。
そんな思いが急に渦巻き出し、男への憎しみとなって胸を支配する。あたし自身の過失とかそんなのは棚に上げ、ただ刺客の男の存在が忌ま忌ましくて。
強く唇を噛み締めて男を睨みつければ、あまりにも予想外……否、予想さえもできなかった異常現象に、その場に居た誰もが目を見開いた。
――もちろん、あの刺客でさえも。