透明水彩

未だ続く刺客の断末魔を聞き流しながら、ふと、視線を痛みの方へ走らせる。

すると目に映ったのは、深紅。
血とかそういう類の赤ではなくて、ただ純粋な真っ赤。それがあたしのリングが放つ光だと理解するまで、今のあたしではたっぷり十秒ほどかかった。

もともと、ガーネットのようなワインレッドの石が埋め込まれていたはずなのに、今その石は、赤く、朱く。この世のものとは思えないほどに紅く鮮やかに、あたしの手元で光り続ける。

それと同時に痛む、指。感じる熱気に、今の異常現象――刺客が急に燃え出す――が、このリングによって引き起こされたのではないかと、そんな推測がよぎった。

でも、まさか…。
そんな危険なものを形見のように遺した上、肌身離さず持ち歩けなんて、そんなことお父さんもお母さんも言うはず無いじゃないか。…まあ、今となっては真意はわからないけれど。

いつの間にか止んでいた断末魔、茜色の空へと同化するかの如く燃え続ける物体は、もはや人としての名残など何一つ無かった。

恐らく、普通の火とは違う特殊な炎なのだろう。たくさんの廃材には引火することはなく、ただ対象だけを燃やし尽くそうとするように、勢いは弱まらない。

そして結局、炎は対象を燃やし尽くしてから何事も無かったように消えた。結果それが遺したのは、真っ黒な焦げ跡だけだった。
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