透明水彩
…――さっきのは、夢?
ふと、そんな考えが頭を過ぎる。
こうしてまた日常に戻ってくると尚さら、さっきまでの出来事が信じられなくなるのは、当然といえば当然で。
夢であればいい、そんな思いで自分の身体を見回せば、記憶と違わぬ衣服についた、淡い月の光に浮かぶ誰か――恐らく理人の血痕……。
さっきのは夢ではないと、間違いなく現実だと、そうしらしめるような痕跡に、ぎゅっと胸が締め付けられた。
……そういえばあたし、あの後どうしたんだろう?
理人が殺されそうになって、訳がわからなくなって、それで……。…――ああ、男がいきなり燃え出して、焼き尽くされて……?
あれ、焼き尽くされて、って何。何で?
ハッとしてリングへと視線を落とす。けれどリングはいつもと同じ、赤い光など微塵も放ってはいなかった。
――わからないことが、多すぎる。
不安なことや危険が、あたしの周りにひしめき合いすぎてる。
ただ混沌の深みへ落ちていく思考には、何一つ確証をもった事実なんてなくて。
ただ一つはっきりしているのは、他でも無いあたしが全ての発端であることだけだった。