透明水彩
あたしといたから、理人や藍香を巻き込んでしまった。
あたしを庇ったから、理人が怪我をした。殺されそうになった。
あたしがさっさと、どこかの世界へ行っていたら。わがままを通さず、いつまでもこの世界に縋ることをやめていたら。
きっと、何かは変わっていたはずなのに。
右手で、ぎゅっと左手のリングを握りしめる。妙に冷たいそれは、さっきとはまるで別物のようだった。
…――これは、兵器?
まさか、とは思うけれど、今となっては自信を持って否定することなどできやしない。でもこれが本当に兵器だとしたら、あたしが使ってしまったのだとしたら。
あたしはさっき、人を殺したことになるのだろう。いくら相手があたしを殺そうとしていた刺客だったとしても、相手が痕跡一つ遺さず死んでしまったとしても、その事実は変わらない。
両親を殺した奴と同様、あたしも殺人鬼になってしまったのだと、そこまで考えて気持ち悪くなった。