透明水彩
カチ、カチ、と、壁時計の秒針が微かな音を奏でる。刻一刻と過ぎていく時間を感じ、横目で時計を見遣れば、時刻は午前2時をさしていた。
ああ、今ってそんな時間だったんだ。なんて、沈黙の中、今さらながら気がつく。それと同時に、夕暮れ時からずっと眠り続けていたらしい自分に、少しだけ驚いた。
「…――美凪、ちゃん。」
そんな中、広がり続ける沈黙を破ったのは他ならぬ叔父さんの声。椅子に座ってあたしを見据える真剣な瞳に息を呑みつつも、しっかりと耳を傾ける。
「何?」
「出発は、いつにしようか?」
出発…もとい、装置への搭乗。
必然的に訪れるこの世界との別れは、今、間違いなくあたしが選択した道だった。
“安全な世界”へ行けば、文字通りあたしは安全なのだろうし、この世界で理人や藍香を巻き込むことは無くなる。
でもその代償に、あたしはこの世界にはいられない。
いつ戻って来られるかなんてわからないし、戻って来られるかどうかさえもわからない。