透明水彩
◆◆◆
「美凪ちゃん、本当に理人君にも藍香ちゃんにも……、」
「うん、言わない。だから叔父さん、何か2人に聞かれても、何も知らない、で通してね。」
「……あぁ。」
――午前7時。
あたしは今、お父さんの研究室にいた。
もちろん、この世界から出て“安全な世界”へと行くために。
目の前には眉をハの字に下げた叔父さんと、白い箱のような装置がある。
まるで白い棺桶だな、なんて笑えないことを心中で思いながら自嘲し、叔父さんを安心させるためだけに口角を上げた。
「……色々、屁理屈並べてごめんなさい。結局こうなるのなら、叔父さんを困らせないでさっさとこうしてればよかった。」
「そんなこと、ないよ。」
そんなこと、ない訳ないじゃない。もう叔父さんの表情を確認することもできず、がたん、大きな音をたてて箱が閉じられる。
真っ暗な箱の中でただ左手ごとリングを握りしめ、静かにまぶたを閉じた。