透明水彩

「……気をつけて。」


箱の外から、微かに聞こえた叔父さんの声。
それが隔絶された今のあたしの耳に届いた、この世界での最後の音だった。

この装置の性能なんて、よくわからない。
研究の賜物だって言われているけれど、本当かどうかなんて定かではない。知る由もない。

けれど今は、それに縋るしかなかった。
それしかあたしに、あたしの大切な人達を巻き込まない方法なんて、思いつかなかったから。


◆◆◆


何かに引き込まれるような、そんな独特な感覚に耐えること数十秒。いや、もしくは数分だったかもしれないけれど、はっきりしたことはわからない。

痛くは無いけれど突如身体を襲った衝撃にゆっくりとまぶたを開けば、何故かしりもちをついたような体勢で座り込む自分自身。

お尻を払いながら立ち上がり、辺りを見渡せば、そこは見覚えのある家の前だった。
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