透明水彩
「あたしの、家……?」
間違いなく、今、目の前にあるのは住み慣れたあたしの家。汚れて古ぼけた表札には、確かに“高瀬”と示されている。
…――だけど、何だろう。
あたしが最後に家を見たときは、こんなに家は寂れてはいなかった。第一、未だ警察の手によって、確かに閉鎖されていたはずだった。
なのに、何?
人が住んでいるかどうかどころか、人の出入りする気配すら感じさせないその家は、もう何年も手入れされず放置された、空き家のような雰囲気を醸し出していた。
そしてふと、思い返す。
あたしがここに来た理由を。
ここが本当に“安全な世界”なのかどうか、と。
あたしはその世界に行くため、お父さんの装置に乗った。でも到着したのが自分の家だなんて、全く意味がわからない。
結局お父さんの研究も成果を出しえず、あたしはあたしでその不明確な研究に縋って。
何一つあたしには変えることはできないのだと、静かに自嘲した。