透明水彩

つい数秒前、あたしに近づいてきた湊は、間違いなく前より大きくなっていたのは明らかだった。

その事実にただでさえついていけなくて、言葉に詰まりそうだったのに、何なの。

何であたしは今、湊に担がれて半強制的にどこかへ連行されているわけ?


「ちょ、マジ、湊さあ、どこ行くつもり? っていうか、とりあえずおろして。どこでもついていくし、自分で走るから。」

「は? ダメ。だってお前、オレより走るのおせーじゃん。」

「フツー、あんたと比べないでしょ!」


紡がれる理不尽な理由に、変わっているのは外見だけなんだな、と不意に思う。

かみ殺したような笑い声を漏らす湊は、あたしの知っている湊と何ら変わりはなくて。

後輩である湊が存在するここは、やっぱり“安全な世界”なんかじゃないのだと、改めてそう考えて虚しくなった。

結局あたしは何も変えれない。
あたしの決断は何も意味がなかったのか、と。
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