透明水彩
「別に、あんまうるせーこと言うなって。…ほら、もうすぐ目的地に着くし。」
「え…?」
深い困惑に巻き込まれそうになった意識は、湊の声によってそれを憚られた。
そしてそれを機に、あたしもようやく周囲へと視線を走らせる。
すると、あたしを担ぐ湊と湊に莱と呼ばれた少年が足を踏み入れたのは、“あの”廃材置場だった。昨日の出来事が鮮明に思い出され、ずきり、と胸が痛む。
でもそんなことを知るはずもない2人は、ただただ奥へと足を進める。その最中、もうすぐ刺客の男が発火した地点だな、と思いながらそちらを見遣れば、ふと、また些細な違和感を感じた。
…――あれ、ない。
刺客の焦げ跡が、ない。
途中で意識を飛ばしたあたしにさえ、はっきりと記憶として残る、刺客の燃えた焦げ跡。
嫌でも目につくその真っ黒な焦げ跡が、本来あるはずの場所にない。