透明水彩
「それは…、」
「いいぞ、理人。それは俺から説明する。」
あたしの問いに答えようとした理人を制し、刹那、ゆっくりと立ち上がった1人の長身の男。
あたしに近づいてきたその男を見ながら、ぼんやりとした記憶の中の若い彼と重ね合わせる。
「ケイ……?」
「やっぱり美凪は、昔から小せぇなぁ!」
すると、くしゃり、とでも効果音がつきそうな笑みを浮かべ、ケイ――雨宮啓志(あまみや けいし)は、あたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ちょ…っ!」
ケイはあたしの母方のいとこ。3つ年上で7年後ってことは、今は恐らく28歳となっているはず。小さい頃から遊んでもらったりして、理人や藍香とも親しくしていた。
それにしても、こんな状況で久しぶりに会って、いきなり「小せぇなぁ!」だなんて。意味がわからないし、話に関連性のかけらもない。
「………んで、何だぁ?何でここが“安全な世界”なのか、だっけか?」
けれど、悪態の一つでも吐こうかと開きかけた口は、ケイが突如浮かべた真剣な表情により閉ざさざるをえなくなって。あたしは悪態を吐く代わりに、小さく頷いた。