透明水彩

居心地の悪い、身体に纏わり付くような沈黙が流れる。
ドア付近の壁に掛けられた壁時計が時を刻む、カチカチという細かい音だけがやけに響いていた。


「……美凪ちゃん。」


そんな中、数分続いた沈黙を破るように口を開いたのは、紛れも無い叔父さんで。


「この時代、この場所は、過去の美凪ちゃんにとって確かに安全なんだよ。長居はできないし、少しばかり荒廃してしまったが、誰かと一緒になら、アジトから出て外だって歩けるからね。」


真剣な表情の中にも柔らかい微笑みを織り交ぜ、あたしに語りかける叔父さん。けれどふとした刹那、叔父さんが再び笑みを消した。


「だけどリングについて一つだけ、覚えておいてほしいことがあるんだ。」

「覚えておいてほしいこと?」


叔父さんの言葉に、反射的に左手中指で光るリングへと視線を移す。相変わらずなリングは、キラリ、と室内の蛍光灯の明かりを反射させた。
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