透明水彩
もちろん、心配なんてしてないよ。
この世界が平和であるなら、それはそれで問題ないのだ。
それよりも気掛かりなのは、あたしが元々いた世界の方だった。自ら決めてこの世界に来たくせに、本当に今さらだけれど。
あっちはあっちであたしがいなくなって、ちゃんと平和が訪れているのだろうかと、少なからず心配になってくる。
黙ったまま別れてしまった同い年の幼なじみの顔が脳裏に浮かび、急に切なくなったあたしの思考は、今の心境も相まって“戻りたい”という意志を確実に提示した。
「……戻るよ、あたし。」
不意に紡いだあたしの言葉に、再び訪れた沈黙。
みんなが目を見開いて、ただあたしを見つめる。
「は?何言って……、」
「例え荒廃していたとしても、今この時代は、抗争はおさまっているんでしょ?…なら、また争いのタネになるあたしの存在なんて、この時代にはいらない。」
訝しげな表情で口を開いた湊を遮るように、あたしはそう言い放った。