Pianissimo
「…あ、あれ」

目が覚めた。

つまり、寝ていたという事。


いつから寝ていたのだろうか。

今は何時だろうか。

もう美樹は帰ってしまっただろうか。

ぼんやりとしか見えない目を擦って、時計を見る。

5時…。確か最終下校時刻は6時だよな…。

あ、まだ終わってなかった。よかった。


ほっとして再び寝ようとしたところである違和感に気がついた。

肩に見覚えのあるパーカーがかかっていたのだ。

まさかと思い辺りを見渡すと、津々稀先生がピアノの椅子に座って何やら作業をして…いや。あれはきっと寝ている。


…やっぱり、このパーカーは先生のだった…。

起きたばかりでだるい体を起して、パーカーを手に取る。

先生が起きない事を良い事に、私はパーカーに顔を埋めてみた。

ほんのりと煙草臭のするが、すれ違ったりする時に漂う先生の匂…。

胸が締め付けられるようだった。

こう、きゅんっとする感じ。



――…ああそっか、私…。



――…先生に恋しちゃったのか。
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