最後の恋
「だからエリから結婚するって聞いた時、本当に嬉しかった。でも……多分それ以上に…私は寂しかったような気がする。サキが結婚した時もそうだったけど、嬉しいはずなのに、正直複雑な気持ちになっちゃってさ…」
いろんな想いを噛みしめるように私は言葉を繋いでいく。
「あぁ、週末はいつもずっと一緒にいたのになぁとか。朝まで飲み明かす相手がいなくなっちゃうんだなぁとか…私のことなんて、時々思い出すくらいになっちゃうのかなぁとか。そんなことばっかり考えてさ」
おめでたい席で、私は何を言ってるんだろう。
「祝福しなきゃいけないのに…心からおめでとうって思うことが私にはできなかった。もしかしたら、今日までずっと。でもね、今日のエリを見てると…やっと心から思えたんだ。おめでとうって。シン君と、幸せになってほしいって」
泣きながら、エリの顔を見た。
エリも、泣きながら私を見ていた。
「多分私、シン君に嫉妬してたんだね。エリを取られちゃったって、思ってしまってたんだと思う。でも…今日のエリ、私の見てきたどのエリよりも一番綺麗な笑顔をしてた。だから……もう安心して任せられる、シン君に」
私はそう言うと、エリの隣に座るシン君を見た。
「エリのこと…絶対に幸せに…っ…して下さい。絶対に泣かせるようなことだけは…しないで…っ……ずっと大切にして下さい」
言いながら、深く深く頭を下げた。
すると、
「はい、絶対に!約束します。幸せにします。一生、全力でエリを大切に守ります」
シン君の大きくて強い言葉が、披露宴会場に響いた。
「よろしく…お願いします」
私がそう言って頭を上げると、会場全体から一斉に拍手が鳴り響いていく。
しばらく鳴り止まない拍手の中、私は一礼をすると、溢れる涙を拭いながら席へと戻った。