恋した鬼姫
戸惑い
セラは、喜助と共に旅を続けていた。
セラは、途中で寄った茶屋で殿様の噂を聞いた。

「私のせいで、沢山の人が辛い目に…。」
セラは、考え事をしながら歩いていた。

「セラ、馬鹿なこと考えるなよ。また、殿様の所に戻ったからと言って、今の殿様が殿様をやってる限り、皆幸せにはなれる保証はないってわかってるぜ。」
喜助の言葉は、説得力が合った。

「それより、もうすぐで関所にたどり着くぞ。ちゃんと、演技しろよ!」

関所を通らないと、虎のいる里には、行けなかった。残念ながら、関所を通る以外の道では、女のセラを連れながらは危険と、判断したからだ。

人々が集まる関所が見えて来た。一人ずつ調べられるのでセラは、少し怯えていた。侍達がいるからだ。
喜助は、黙ったままセラに合図を送った。
セラは、合図と共に躍りながら小太鼓を叩き始めた。それに合わせて喜助も笛を吹き、踊った。
もちろん、犬も猿も躍り、鳩だけは、喜助の頭の上で羽をバタつかせていた。

「おいっ!うるさいぞ!静かにしろ!」一人の侍が言った。
「すんません。いっぱい人がいると、つい癖が出ましてね。」 喜助は、侍にヘコヘコと頭を下げた。

「うむ、仕方ないな。通行手形を出せ。」
喜助は、懐から通行手形を出した。そして、さりげなく小判を三枚渡した。
侍は、ニヤニヤしながら簡単に喜助達を通した。
セラもホッとしたが、その光景を見ていたせいか、怯えていたことに馬鹿らしくなっていた。

しかし、無事に関所を通ったが、何やら誰かに付けられている気配を感じていた。
喜助は、小さな声でセラに言った。
「平然な顔をして聞いてくれ。何者かに、付けられている。多分、忍者だ。危ない目に合わせたくはなかったが、仕方がない。何が合っても犬と猿から離れるな。コイツらが必ず守ってくれる。わかったな。」
喜助は、同じ道を歩いている農民の中で足音をさせていなかった者がいたので、不信感を抱き、足音をさせずに歩く者と言えば、忍者しかいないと気づいていた。
喜助は、そのままセラを連れて道をそれた。普通の農民を巻き込まないためだ。
案の定、農民に化けた忍者は、追いかけて来た。

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