カラス君と黒猫さん
「俺は黒猫が中学ん時から世話してたから分かってたけど、アイツに厄介な兄貴が居るだろ?ここで黒猫が働いてんのは、仕事中はアイツを俺が守れるから。」
雅がポケットから取り出した煙草に火を点ける。
「それがなぁ、今日昼くらいに兄貴がここに来たんだよ。何でかは分からないが」
「・・・・・・・・ここに?」
「全く意味が分からねぇ。わざわざ俺が居る所に来るか?マユの監視も行き届いてるし」
雅は難しそうな顔を浮かべて、紫煙を吐き出した。
「どうも・・・・・・黒猫を探しているようで気に掛かったんだ」
「・・・・・・・・そうだね・・・・・、」
「昨日の黒猫失踪事件はやっぱり兄貴のせいだろ?」
俺の鼻先を紫煙が漂った。
雅は黒猫さんの事なら何でもお見通しらしい。
「そうだよ。学校に居た」
「学校、・・・・。変な所行くな、アイツも」
窓の方へ漂っていく紫煙を眺めていたら、雅は急に話を元に戻した。
「黒猫は・・・・・・自分を隠して生きてく事が当たり前になってっからなぁ。カラス、お前頑張れよ。」
「はっ?!何を、」
「兄貴ぶん叩け。俺がぶん殴ったら犯罪になっからできねぇ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
妖しく笑うその笑みはもう、あっちの人の顔だ。