イケメン大奥
9.上様のおなり
氷枕は腫れた手首に気持ちいい。
いたわるように手首を避けて指に触れてくるレイ。
「レイ、あと、どのくらいであたし、上様に決定する?」
「わたくし次第です」
……え。
飛び上がってしまう。
「すぐにでも、上様になりたいですか?」
レイは横たわったまま、斜め上に見上げる。まつ毛が揺れて、それが憂鬱そうな表情を醸し出す。
上様になったら、1日という時間の間に、リアル世界と大奥との時間の繋がりについて調べなくてはならない。
「図書室は、棚だらけ、天井まで本が並んでいる。調べるのであれば、重労働になりますよ」
あたしの手首。
今の状態で、あなた様の手首で本をめくるのでさえ、棚の間を動き回るのでさえ、困難でしょう?
レイの言いたい事は分かる。
「それにあなたと共に、もっと居たいのです……」
起き上がったレイの腕があたしの背中に回される。
手首を庇いながら、レイの匂いに包まれる。
レモンの爽やかな香りのなかに、男の人の汗のにおいが混ざって、
不思議。
あたしは嫌じゃない。むしろ、
もっと、こうして居たい……。