シンクロニシティー
けれど――

優しいシュウが人を傷つけることなんか出来るはずもなく……。



掴み合ったままゴロリと横に半回転し、二人は上下逆転。シュウが神崎に組み敷かれてしまった。



「無理すんなって。喧嘩なんかしたことねぇんだろ? 軟弱野郎。女の前だからって粋がんなよ。逆に醜態晒すだけだってのがわかんねぇか?」

嘲笑いながら神崎は、シュウの頬を右拳で殴りつけた。そして痛みに呻く間さえ与えず、シュウの頭を両手で挟むようにして持ち上げ、少し浮かせたそれを床に打ち付ける。



助けなきゃ。

そう思った。



このままだとシュウが神崎に殺される。


私は無意識にキッチンへと走った。神崎を止めるための道具を取りに。



この時の私には、シュウを守る術がそれ以外に思い付かなかった。


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