シンクロニシティー



 お母さんが、どうしてここに?



 それに、シュウのことを『シュウヤさん』と呼んだ。

 母は――
 シュウと知り合いなの?



 何がどうなっているのか。
 訳がわからず混乱して、頭がおかしくなりそうだった。

 自己防衛なのか知らないけど、私の思考は突然プツリと止まる。


 ソファーに腰掛けたまま呆然としていると、当然だと言わんばかりの堂々たる態度で、ズカズカと侵入して来た母に乱暴に腕を掴まれた。

「琴子、帰りましょう」

 苛つきを隠そうとせず、腹立たしげに言う。


 怒りたいのはこっちの方だ。


 束の間の幸せをブチ壊されて。

 昨日から今日にかけて築き上げた、曖昧で不安定だけど心地良くてかけがえのないシュウとの関係を、台無しにされた気分だ。


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