シンクロニシティー
「離してっ!」
思わず大声で叫んで掴まれた腕を思い切り振り、母の手から逃れた。
ハッとしたように目を見張るも、母はすぐ「琴子……」と弱々しい声を漏らして酷く寂しげに私を見詰めた。
責めるでもなく、咎めるでもないその眼差し。
こんな時私はいつも、『母はもしかしたら、本当は私を愛しているのではないか』と、とんでもなく都合の良い錯覚をしてしまう。
「今、帰ろうとしてたとこなのに……」
真実でもあり虚偽でもある言葉を吐いて。
貰った鍵は、こっそりジーンズのポケットに入れた。
母の後について玄関を出る直前、我慢できずに振り返った。