君を忘れない。
幸せな一時に、どこか冷たい風が通り抜けているようだった。
ただ私は、一平さんにはそれ以上聞かないでいようと決めた。
例え胸の内が冷えたとしても、きっと訳あってのことなのだろうと、自分に言い聞かせた。
ついさっき、空襲があったとは思えないほど、私達のいる場所は静かだった。
ここだけは、穏やかで落ち着いた時間が流れているような気さえした。
「…この国はこの先、どうなると思う?」
一平さんは、唐突に私に尋ねた。
難しい質問であった。
「私には…何も分かりません。」
今日の日本のことですら。
そして、戦争を始めてしまった経緯ですら。
「ただ…」
「ただ?」
「全てが終わり、平和になった日本で、一平さんの隣に居ることが出来たなら、これ以上の幸福はないと、そう思います。」
貴方の隣で笑えたなら、それだけで私は十分だと思った。
願わくば、この国に平穏な時が再び訪れますように。
「ふっ。」
「お、おかしいですか…?」
「いや、悪い。」
「?」
「お前が言うと、本当にいつか、そんな日が来るような気がするから不思議だ。」
一平さんはなにかを押し殺すように、笑った。