君を忘れない。



「平穏なこの国を、生きてもう一度、この目で見たいものだな。」



一平さんは空を仰いだ。



平和になった日本で、貴方と生きていたい。



そんなことが、叶うかどうかさえ分からない。



それでもみな、生きていかなかければならない。



いつ戦争に負けて、アメリカの独領下になるか分からないこの国で。



私は、一平さんの手に自分の手を重ねた。



「一緒に見れます。きっと平和はやって来ます。その時は、私も一平さんの傍らにいますから、だから…っ」



平和はきっと来る。



戦争はいつか終わる。



そう信じることだけが、生きる希望だった。



一平さんは、一瞬呆気にとられたような顔をしたけれど、すぐに優しく微笑んだ。



「…そうだな。」



震える私の手を、強く握った。



この手の温もりだけで、生きていけると思った。



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