色をなくした世界
「ねぇ雄大君・・・あの子の側にはもういられないから来たの?お別れを言いに来たの?」



全て知っているかのように、梓は雄大を見ている。



その目が苦手だと思った・・・。



「俺は・・・・・」



続けたいのに言葉が出てこない。



「別に雄大君が雪の側を去ると言うなら・・・私は止めない。雪が私の元に帰ってきてせいせいするくらいだし」



梓は梓で雄大に嫉妬していた。



和哉が死んでから、雪乃が頼ってきたのは・・・・自分ではなく、間違いなく雄大だったから・・・。



「あの子の事はこれからも私が支えて行くから・・・ただね・・・」



梓には梓にしか・・・雄大には雄大にしかできない事がある。



和哉にしかできない事があったように・・・・。



「雄大君が去った後・・・また雪は悲しそうに笑うのかと思うと・・・それは」



悲しい。



「俺が去っても雪ちゃんはすぐに笑えるようになるよ・・・」
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