色をなくした世界
雄大が雪乃の元を去ると認めた・・・・・。



「やっぱり去るんだね・・・」



ひっかけられた思った時には遅かった。雄大は認めてしまっている・・・・。



「そんな事だろうと思った・・・・男は勝手だね」



まるで梓は誰かを重ねるように、雄大を見る。



「女の気持ちなんておかまいなしに・・・自分の気持ちを言って去っていく。置いていかれる方の事なんて考えた事ないのよ・・・」



梓はいつも強気で少しおっかないと雄大が笑った時に、雪乃は梓は辛い事を笑って押しのける強さがある子なんだよと言っていた。



誰だって・・・・傷の一つや二つ隠して生きているのかもしれない。



「雪に気持ちを言うだけ言って・・・雄大君も雪から去っていくのね・・・・・」




和哉のように・・・まだ雪乃を愛して愛して死んだ分、和哉の方がよっぽど良い男だが。




「残される人の気持ちは・・・去る人には分からないのよ・・・・」



けれど悲しそうな梓はそこまでだった。



気を取り直したかのように顔を上げれば、泣きそうな梓の面影は残っていない。


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