色をなくした世界
雪乃は雄大が握っている手を反対の手で包み込み、雄大の顔を上げさせる。



「雪ちゃん・・・俺・・・・・」



ここに来るまでに離れる覚悟をしたはずなのに・・・・雪乃を見るとすぐにその気持ちが薄れてしまう。



こんなに弱い人間だったとは自分でも驚きだ。


いつだって弱音をはく和哉を励ましてきたのは自分なのに・・・。


そう思った時、雪乃の熱いくらいの手が、雄大を引き寄せた。


-フワ-


雪乃の腕の中は、包まれると熱の為か少し熱い。



「雪・・・ちゃ・・・・ん?」



昨日の怖さも残るだろう、少し震える雪乃に離すよう言うが雪乃は腕を離さない。



「離して・・・・?雪ちゃん・・・・?」



困る雄大を見ながら、雪乃は首を振るだけだった。



諦めそのままになっていると、雪乃が呟く。



「昨日のお返し・・・・これで・・・お互い様だから・・・」



だから・・・気にしないで。
< 142 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop