色をなくした世界
こんな事で昨日の仕返しになるはずがないという事は雄大が一番よく分かっている。



しかし雪乃はこれでお互い様だと言うのだ・・・。



(あんなに・・・酷い事をした・・・・俺に・・・)



これくらいで許されるわけはない。



分かっているのに・・・・雄大には雪乃の優しさが嬉しかった。



「雪ちゃん・・・・こんな事で許されるなんて・・・思っていないよ・・・」



けれど雪乃の優しに甘えてばかりもいられない。




雪乃は雪乃でどうすれば雄大が笑ってくれるのか・・・ずっと悩んでいた。




(いつもみたいに笑ってほしいだけなのに・・・)



雄大の笑顔が見たかった。



ここ最近自分たちにはいつだって薄い壁のようなものがあり、その壁を超える事ができなかった・・・だからこんな風になってしまったのだ。




和哉がいた時には感じなかった二人の距離・・・それが和哉がいなくなってからいつの間にか曖昧になっていた。



近いようで遠く。遠いようで近く・・・いつだって手が届く場所にいるのに・・・・心だけは違う所に・・・・。
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