色をなくした世界
「春日谷が大丈夫だと言うのに無理に聞くこともできず、その日は春日谷の家に泊めてもらったんだが・・・夜中どうしても眠れず、リビングに行ってみると・・・・泣きもせず一点だけを見つめるアイツがいたよ」


雪乃にも覚えがあった・・・・。


一日は普通に過ぎていくのに・・・心が着いていかなかった。


「気付かれない様にずっと見ているとアイツが何か呟いているのが聞こえたんだ・・・よく聞いてみると・・・」


思い出すのも辛いと言わんばかりの青山の顔に、雪乃もだいたいの事を想像する。


「莉子は死んだ。莉子は死んだ。ずっとそう呟いていたよ。まるで自分に言い聞かせるようにね・・・・」


和哉は死んだと自分に言い聞かせる姿と、一馬が莉子は死んだと言う姿が重なる。


「だから・・・・あの忘年会の日止めなかった。・・・・そのせいで雪乃ちゃんには辛い思いをさせてしまったけど・・・」


青山が大変申し訳なさそうに雪乃を見ている。


「青山さんのせいじゃないです!私がいけなかったんです・・・・だから気に病むのは辞めて下さい」


本当に誰のせいでもない。自分の弱さが招いた事だ・・・・。


「それに・・・今では春日谷さんにも感謝しています。春日谷さんの言葉でたくさんの事に気付きましたから・・・・」


愛されていた事を思い出した。


和哉が望んでくれていた事を思い出した。


それだけでも十分過ぎるほど、一馬には感謝している。
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