色をなくした世界
お互い同じような形で大切な人を失い、同じ傷を背負った。


雪乃の気持ちは一馬に分かる。

一馬の気持ちは雪乃に分かる。


雪乃も一馬も何も言わずお互いを見ていた。


「敬語と一馬さんという呼び方は莉子を思い出すんだ・・・・」


一馬を呼び捨てにできないと言った時、一馬は呼び捨てで良いと言い張った。


「雪の声が・・・莉子に似ているから・・・余計に・・・・」


和哉に一馬が似ているように・・・・雪乃もまた莉子に似ていた。


「私も同じだよ。一馬の顔で雪乃って言われたくなかったの・・・・私を雪乃って呼ぶのは両親以外には和君だけだったから・・・」


ただ一人の人が呼んでくれた名前。


「だから一緒・・・私たちは・・・一緒」


一番大事な人を・・・亡くした。


雪乃の声が静寂に消えた時・・・雪乃は一馬に抱きしめられた。


-フワ-


一馬の体温が、匂いが・・・


えっと思い離れようとすると、それを一馬が許さない。


「離して・・・・」


雪乃が声に出した時・・・・
< 88 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop