償いノ真夏─Lost Child─
*
目を覚ますと、白い天井が見えた。
痛みで身体が動かない。
消毒液の匂いに、意識が冴え渡る。
「──真郷」
ひどく優しい声色に、ゆっくりと視線を傾けると、傍らに父の姿があった。
「父……さん……」
「もう、大丈夫だからな」
大きな父の掌が、真郷の髪を撫でる。自然と、涙が溢れた。
安堵の為か、喪失感ゆえか。
骨折などの理由をもとに、真郷はしばらく入院する事となった。
そしてその頃、両親の離婚が決まった。
理由は何となく分かっていた。だから、言及もしなかった。
真郷はただ、事実を受け入れるだけだった。