償いノ真夏─Lost Child─





目を覚ますと、白い天井が見えた。

痛みで身体が動かない。
消毒液の匂いに、意識が冴え渡る。

「──真郷」

ひどく優しい声色に、ゆっくりと視線を傾けると、傍らに父の姿があった。


「父……さん……」

「もう、大丈夫だからな」

大きな父の掌が、真郷の髪を撫でる。自然と、涙が溢れた。

安堵の為か、喪失感ゆえか。

骨折などの理由をもとに、真郷はしばらく入院する事となった。

そしてその頃、両親の離婚が決まった。
理由は何となく分かっていた。だから、言及もしなかった。

真郷はただ、事実を受け入れるだけだった。


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