恋のはじめ



刀のぶつかり合う音が何重にもなって耳に届く。



同時に、視界に大量の赤い血までもが入り、目をふさぎたくなる。



咲希は剣を持つも、一向に敵に斬りかかれずにいた。




「何ボーっとしてんの?」




斬り合いの中、沖田の声が耳に入る。




「お、沖田さんっ」



怯えたような口振り。




瞬間、突然浪士が咲希に斬りかかってきた。




「きゃっ」



それを何も躊躇わずに刀を振る。



「そんなんじゃ、殺されちゃうよ」




倒れる浪士を背景にそう言った。




「わっ分かってますよ」




分かってる。




分かってるけど、刀を振れない。




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