ワケがありまして、幕末にございます。
うちは普通…とはちょっと違った家庭だった。
父は華道の家元で、でもそのくせに茶道、武道、合気道、全て出来る器用な人で。
『僕を超えろ。
それがパパの幸せだ』
笑ってそう言うのが父の癖だった。
見た目クールなのに中身はバカで、一人称の“僕”が誰よりも似合わない父。
そんな父が大好きだった。
その日も、父は自分の仕事を早々と終わらせるとアタシに絡んできた。
『愁ちゃーん、あーそーぼー』
『やーだーよー』
『えー!』
30代とは思えない容姿と性格で、アタシは見事にその遺伝子を受け継がなかった。
10歳にしては可愛いげがなく、どこか大人びていて、性格も今のアタシのまま。
『そのうるうる攻撃キモいからやめて欲しいな、キモいから』
『2回もキモい言わなくても…』
『大事な事は繰り返さないと』
『(;д; )
椿、我が子は日に日に君に似てきているよ…』
既に死んでしまった母にそっくりだと、父はよく言う。
多分アタシは母の遺伝が8割、父の遺伝は2割なんだと思う。