甘く、甘い、二人の時間
まだ夕方6時頃のはずなのに、季節は冬支度を始めたせいか、辺りはほとんど真っ暗で。
外灯から離れれば、人の顔すらはっきり見えない。
――でも。
私が、絶対に間違うはずのない人が立っている。
「……拓海?」
ゆっくり近づきながら声をかけるけど、返事はなく。
かわりに冷たい手が伸びてきて、私をきつく抱き締めた。
「…拓海?」
アパートの防犯ライトが私達の動きを感知して灯り、無言の拓海の顔を照らし出す。
抱き締められた腕の中、顔を上げて拓海を見れば――
苦しい様な、切ない様な、今まで見たことの無い表情。
「…どうしたの?」
その冷たい頬に手を添えて訊ねる。
だって、見ている私が苦しくなりそう。
「まだ、仕事中?時間があるなら、とりあえず部屋に上がって?」
返事のない拓海を、半ば強引にアパートへと招いた。