夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「今までにも、吐き気とかあったの?」
「うん…。1ヶ月位前から、ちょこちょこ嘔吐感には襲われてた」
「そんなに前から!?」
俊ちゃんはそれっきり黙り込んだ。
それから沈黙だけが続き、私の嘔吐感も静かに消えていった。
「俊ちゃん有り難う。もう大丈夫だから」
早く俊ちゃんの傍を離れないと、決心が鈍ってしまう。
私はゆっくり立ち上がり、背を向けて1歩を踏み出した。
すると、俊ちゃんに手首を掴まれ、逃がさないと言うように行く手を阻まれる。
「……真弥は、ずっと1人で悪阻と戦ってたんだね…。ごめんな…」
いつもはちょっぴり俺様な感じで話をする俊ちゃんが、どう言う訳か急に優しくて甘い口調に変わる。
「謝らなくって良い…。もうすぐ…それも終わるから…」
赤ちゃんに対する申し訳なさで、涙が込み上げてくる。
ここで、さっきみたいに泣けば、また俊ちゃんに迷惑を掛けてしまうし、悲しい顔をさせる事になる。
そんな事、もうさせたくない。
私は唇をグッと噛み締め、空を見上げながら溢れ落ちそうな涙を必死に堪えた。
だけど、俊ちゃんはそれに気付いたのか、手首を掴んだまま立ち上がると、私の体をクルッと反転させた。