夏の空~彼の背中を追い掛けて~


「……」



何も答えられない紀香に、今にも噛み付きそうな勢いで詰め寄る私を、母が諌める。



「真弥!!落ち着きなさい!」



「…。紀香、直ぐに仕度するから待ってて!」



ハッと我に返った私は自室へ行き、寒くない服装に着替え、バッグを手に玄関へ向かった。



「真弥…何でそんなに着込んでるの?ダルマみたい」



普段よりも厚着をした私を、上から下へ下から上へ見て、母は不思議そうな顔をする。



「バイクの後ろに乗せて貰うし……それに…」



俊ちゃんの子供を妊娠してるから。



そう言おうとして、言葉を飲み込んだ。



今、ここで話してしまえば、確実に母に引き留められる。



少しでも早く病院へ行くには、まだ言っちゃいけない。



私は靴を履き、紀香と飛び出すように外へ出た。



「ノンちゃん真弥ちゃん、何やってんの?遅いよ」



バイクに跨がったまま、ずっと待機してくれていたのは、孝道君と……誰だろう?



ヘルメットを被っているから、分からない。



首を傾げる私を見て、紀香が手短に話してくれた。





< 301 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop