夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「漣が忘れられないのは、私自身じゃなく体の方でしょ?」
体育祭の時、確かにそう言っていた。
「私はね、漣には凄く感謝してるの。あの時、私達が別れなければ、私は俊ちゃんに出会えなかった」
だからちっとも、後悔なんてしていない。
「私の事は忘れて良いから、漣は自分だけの幸せを見付けて?」
「……俊ちゃんを好きなままでいい。忘れなくていい。俺に、真弥と子供を守らせてくれないか?俺にとっての幸せは、真弥と一緒に居る事なんだ!」
後ろから漣に抱き締められ、囁くようなその言葉に、心がグラグラ揺さぶられる。
だけど、私の決意は変わらない。
「漣…有り難う。凄く嬉しい。でも私は、これから先も俊ちゃんだけを愛し続ける。だから漣の気持ちには答えられない」
漣には、私の初めてを全て捧げた初カレ。
きっと何年、何10年経っても、私の中から消えてしまう事はない。
だけどそれは“愛”ではなく“思い出”。
漣にとっても私は初カノだから、“思い出”を“愛”だと勘違いしているだけ。
「……。俺、何年経っても待ってるから。時間がある時は必ず会いに行く。だから···」
ダメ!!この言葉の続きは聞けない!
どんなに固く決意しても、弱った心に囁かれる優しい言葉は、それさえも崩そうとする。
私は漣が何を言おうとしているのかを察し、敢えて言葉を遮った。