夏の空~彼の背中を追い掛けて~
「じゃ、おやすみ」
ブブーーーンッ。
ブーーーンッ。
2・3度アクセルを吹かし、俊ちゃんは風の様に去って行った。
私はバイクの音が雨に消される迄見送り、誰にも見付からない様にコッソリ玄関のドアを開けた。
あっ!部屋に行けない。
全身ずぶ濡れだから、このまま上がると床も汚しちゃう。
どうしよう…。
成す術もなく呆然と立ち尽くす私に、助け船が現れた。
「真弥、お帰り」
「紀香良かったぁ、気付いてくれて」
「今、タオル取って来るから待ってて」
物音を立てない様に廊下を駆け、紀香はバスタオルを手に戻ってくる。
「有り難う」
受け取ったタオルで頭や手足を拭いている間、紀香が私のバックを持って来てくれた。
「何から何までごめんね」
「いいよ。私、部屋で待ってるから、ゆっくり着替えておいで」
「有り難う、紀香」
ヒソヒソと小声で言葉を交わした後、私はお風呂場で予備の服に着替えた。