もらう愛=捧げる愛
「どうしたのか教えて」


「えっと…昨日友達と飲んでてハメはずしちゃって。ぶつけたような気が…する、かな」


「さっきはヤケドだって言ってただろ?」


「………」


「ボクには話せない事?」


「…仕事に戻らなきゃ」


「逃げるの?」


「そーゆーんじゃ、ない…」


ハルくんはクシャ、と前髪をかき上げ、大きく息を吐いた。


「ゴメン。ボク、今すごい初音さんを困らせてるよな」


いたたまれない気持ち。


できる事なら打ち明けてしまいたい。


そして助けを求めたい。


“あたしを助けて…!”


叫びたい衝動にかられるのを、心の中のもう1人のあたしが止める。


“ハルくんを巻き込んじゃ、ダメ。多田さんとの事を知られてはダメ”


そう。


絶対に隠し通さなきゃいけない。


これはあたしだけの問題。


だからハルくんを見上げて、笑った。


「もう、ハルくんたら大袈裟だなっ。ね、早くお昼行っといでよ?時間なくなるよ?」


ハルくんの手をふりほどき、あたしはデスクに戻った。
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