もらう愛=捧げる愛
「初音!」


車を探す間もなくかけられた声に肩が跳ねる。


「ごめんなさい…多田さん…。仕事片付かなくて…」


「いいよ。仕事なら仕方ない。乗って?」


人目につかないよう、素早く車に乗る。


「オレん家、行くからな?」


あたしは何も言わず、ただ俯いた。


不気味な程上機嫌の多田さん。


あたしが別れ話をすれば、昨日のように豹変するに違いない。


ぶたれる、噛まれる、その痛みに身構える。


強要されるセックスに心も体も震えていく。


怯えるあたしを知ってて多田さんは楽しんでる、そんな気がした。
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