もらう愛=捧げる愛
泣き腫らした目でメイクも髪も気にせず、痣と傷だらけの体を引きずり、課長とアパート近くの喫茶店に向かった。


混み合った喫茶店の奥のテーブルに多田さいはいた。


「お二人揃って。話は想像つくよ。初音を解放しろ、だろ?」


課長と並んで多田さんの向かいにつくと、あたしの体は小刻みに震え出す。


多田さんの目が怖い。


あたしを刺すように、それでいてこの緊張感を弄ぶようにニヤけた表情。


直視できずに、あたしはただ俯いた。


「課長、言っただろ?ソイツ、初音はオ・レ・の」


「これ以上初音を苦しませるな」


「ククッ…。お姫様を救うナイト気取り?おいしいトコ持って行って初音を自分のモノにしようって魂胆なんだろ?」


「違う。初音は自由になるべきだ」


「自由ねぇ…。初音はオレとのセックスでのびのびしてるよなぁ?ヤる度にイキまくってさ、“ヤメテ”って叫んでオレをそそって何度もセックスをせがむ。そうだろ?初音?」


「…お願いです………。別れてください…」


「オレは初音から離れないよ?ホラ、初音、こっち来いよ」


「…イヤです」


「多田がこれ以上初音につきまとうんなら、出るとこへ出るつもりだ」


「ククッ…。ケーサツ?初音、言えるのかよ?何人もの男と寝て、オレにお仕置きされたって、言える?」
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